[[書評]]
|書名|もてない男|童貞であることの不安|
|副題|恋愛論を越えて|「おかず」は必要か|
|著者|小谷野敦|女は押しの一手|
|出版社|ちくま新書|てめえらばっかりいい思いしやがって!|
|出版年|1999|妾の存在意義|
|||強姦する男、誘惑する女|
何とも切実な章立てだろう。小谷野の企みはこの題と章立てで成功していると言って良い。書いてあること自体には首を傾げてしまうところもあるが、切実さをここまできっちり訴えていく人も珍しいと思える。所詮、もてない男のひがみだと揶揄されることがわかっていながらこの本を書いてしまう覚悟と、逆に格好しか気にしないクリエイターと言われる人たちの覚悟のなさを浮き彫りにしてしまう怖さを秘めた書物だ。繰り返しになるが内容が凄くて誉めているというよりは覚悟の決め方が潔くて誉めているという感じだ。
もてるようになれと言われてもその練習をつませてくれないと小谷野は訴える。上野は「そこまで面倒見きれないと」切って捨ててしまったが、結構重要な視点かも知れない。むしろ逆に、これが身体障害者だったら上野は切って捨てられただろうか?弱者に対するまなざしを一応内包し、しかもそれが理論形成の一部をなしているフェミニズムにとって結構痛い問題かも知れない。例えば、女性には管理職への道が閉ざされているしその経験をつむ場がないと言った要求に対して「そこまで面倒見きれない」と企業の幹部が言ったとする。これは同じロジックのような気がするからだ。

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